本来さまざまな準備が必要なトライアスロンではあるが、その日はマラソンシューズのまま自転車に乗ることになったので、実はほとんど準備する物はなかった。という訳で簡単な準備も終わり、タイム差スタートによりトップ選手から20分後に私の自転車競技はスタートした。

その日は「体験会」ということもあり、自転車の種類も様々だった。さすがにママチャリはいなかったが、私のようなMTBからバリバリのロードレーサーまでいた。

実はロードレース用の自転車は競輪のようにペダルとシューズを固定しているため、下に押す力だけではなく、上に引っ張る力も使えるので通常の自転車よりはスピードが出やすい。

 

そんなロードレーサーが多い中で私はMTBで必死に頑張った。何人か抜いたかもしれないが、同じ所を何回も回るので周回遅れでスタートした私には状況がつかめない。

そして自転車競技も終わり今度はマラソンに移る。

 

自転車を置き、走り出した時には股関節に何とも言えない違和感を感じたが、少し走るとそんなことはどこかに吹き飛んでいた。三種目の中で唯一レース経験がある種目なのでここで頑張らないと挑戦した意味がない。

5キロという私にとっては短い距離だったが、それだけに全力で走った。そして、長いような短いようなトライアスロン体験会のゴールが見えた。感動という程の盛り上がりは感じなかったが、ある程度の達成感はあった。プールでほとんど泳げなかったことを除けば…

その後は私を誘ってくれたYさんの知り合いと共に焼肉をした。初めて会う人ばかりだったが、スキーで国体やインターハイに出た人などが多くびっくりした。後にこの人達と一緒にトライアスロンの練習や大会に出ることになるとは、その時は全く想像もしてなかった。

 

なんとかトライアスロンの体験会を終えたものの、その時の私はトライアスロンに挑戦したいという気持ちにはならなかった。むしろ「あんなのとても無理だ」と思っていた。

そんな私の気持ちを知ってか知らずか、私を体験会に誘ったYさんは「もう少し泳げるようになったらオロロンも余裕だから」とトライアスロンの道へ引き込もうとする。彼はいつも人を乗せるのが上手い。

 

彼自身も相当なアスリートであることは間違いないが、指導者になったらオリンピック級の選手を育てられるかも、と思うほどおだてるのが上手い。しかし、そんなYさんにトライアスロンの魅力を何度も語られるうち、私は徐々に洗脳されて遂にトライアスロンを始める決意をした。

「2年後のオロロントライアスロンを目指す」

というちょっと頼りない決意だったが、その時点で全く泳げなかった私にとっては最大限の強がりだった。あまり乗り気じゃなかったものの、とりあえずトライアスロンを始めようと決めた。