スイミングスクールでは、3回手をかいて1回呼吸をする練習をしていた。しかし、実際に海で泳いでみるとそんなきれいな息継ぎなど出来ないことが判明した。

ある程度想像はしていたが、波があるのでプールのように鼻と口だけ出せば息を吸える状況ではなく、かなり大きく顔を回して完全に顔が出るくらいじゃないとまともな呼吸は出来ない。

 

そうなると、呼吸するにも利き手みたいなものがあり私の場合右側でしか呼吸は出来なくなっていた。したがって、終始2回かいて1回呼吸をするの繰り返しでスピードは出ないし泳ぐ方向も気がつくとあらぬ方向へ向いていた。

とはいえ、少しずつではあるが前に進んでいるのは確かで、最初の折り返しであるブイに近付いてきた。プールでも曲がり方はちょっとだけ習ったが、大会では90度以上に曲がらなくてはならないため、ここでかなりのスタミナをロスしたような気がする。

その折り返しを曲がった辺りでは、初心者用の大会で最下位争いをした女の子を見つけた。彼女は私より少し水泳は速かったが、この大会の中ではほぼ同じレベルになるので一瞬目が合うと「どうも!」と言ってその後はお互いマイペースでゴールを目指すだけだった。

 

そんな後半に入るとさすがに疲れが表れてきた。

それまでの練習で2000mを休まず泳いだのは3回だが、いずれもプールでの練習だし自分で数えたので正確かどうかも分からない。しかし、ウェットスーツの威力は有難かった。

トライアスロン用のウエットスーツは種類にもよるが、手足のゴムが厚く出来ているのでかなりの浮力はある。浮力があるということは、初心者の課題でもある体を浮かせるための努力は必要なくなる。

ということは極端に言うと、ただ単に腕を回しているだけで泳げてしまうとも言えるのでズルい気もするが、これはあくまで安全上のために着用が義務付けられているのだ。という言い訳をしてみたくなった。

 

もちろん本当に泳ぎが速い人はウエットスーツが邪魔になる人もいるし、大会や水温によっては海でもウエットスーツを着てはいけない場合もある。そんな魔法のウエットスーツに守られながら、泳ぎ続けやっとスイムのゴールが見えてきた。

何とか2000mを泳ぎきりほんの少しだが、ホッとする瞬間を味わった。沖の方と比べると水温が変わってきたのが解り、再びクラゲの大群をかき分けながらゴールに向かった。

 

スイムのゴールでは実は立ち上がるタイミングが難しかったりする。周りの選手を見ると立ち上がっているのでもう立てるのかな、と泳ぎをやめるとまだ足が着かない場所だったり、普通に泳いでいると水深が50㎝くらいのところだったりする。

更に「やっと着いた」と思って足を着くと急に体が重く感じてしまう。今までウエットスーツの浮力を感じてフワフワ泳いでいたので、宇宙から帰ってきたような重力を感じてしまう。もちろん宇宙に行ったことはありませんが…

 

ゴールした時、私の後ろには数えるほどの選手しか居ないのは分っていたが、チラッと見てみると本当に数人しか居なかったのはちょっと残念だった(笑)53分で海から上がってきた私の後ろには、10人しかいなかったそうです。これは、いかに私がギリギリのレベルで出場したかを物語っている。

そんなことを考える余裕もなく水泳から自転車競技に移らなくてはならない。スイムからバイク、バイクからマラソンに移る途中のエリアをトライアスロンでは「トランジションエリア」と呼んでいる。

この場所で着替えをしたり用具の片付け・セッティングを行い、その間もタイムは引き続き経過しているので早く次の競技に移る必要がある。

 

海から上がってきた私はそのままシャワーがある場所まで、重く感じる体で軽くジョギングしながらたどり着いた。