トライアスロンへの道 その10

 

そんな厳しい練習も回を重ねると、ついに「息継ぎ」の段階に入った。当時の私は息継ぎが全く出来なかった。というより、そもそもやり方が全く解らなかった。

「息継ぎなんて25m泳いだら立って息をすればいいじゃん」

と思っていたが、海でそんなことを言っていたら確実に溺れて死んでしまう。そんな私にとって息継ぎは最大の壁であり、喉から手が出るほど欲しい神業でもあった。息継ぎが出来る人にしてみれば「そんなの顔を横にねじるだけだろ」と思うかもしれませんが、当時の私にすればそれは恐怖だった。

 

息継ぎの練習は、まずは足を着いたまま手の動きと連動する形から入る。クロールの手を後ろに上げるタイミングで顔も一緒にねじる。

足を着いたままなら誰でも出来るが、泳ぎながらその動作をしようとすると必ず鼻に水が入る。元々アレルギー性鼻炎があり鼻呼吸が得意でない私にとってしょうがないのかもしれないが、「息継ぎ=鼻に水が入る」では全く意味がない。

しかしなかなか上手くいかない状態はしばらく続いた。そして、私が最大の難関と思っていた息継ぎは、やはり大きな壁となっていた。

 

なかなか息継ぎをマスターできないタイミングで、今度は市民大会として行われていたトライアスロンに出てみることにした。

相変わらず水泳は苦手というか25mを完泳できないレベルで、自転車はなんとか乗りこなせる状態での参加だ。再びプールでボランティアの人達に迷惑を掛けることが予想されたが、オロロントライアスロン前の最後の体験会だと思って望んだ。

まだ息継ぎはちゃんとできないが、とりあえず25m泳げれば昨年の体験会よりはましだ…と思い軽い気持ちでエントリーした。

 

今回の市民大会は前回の「体験会」とは違って、ちゃんとしたトライアスロンの大会に出たことがある人ばかり。

しかも北海道トップの選手も多く、体験会とはレベルが10倍くらい違う。そんな中でスタートした超初心者の私は相変わらずマイペースで25mを泳ぎ始めた。最初の25mはなんとか泳げたが、まだ息継ぎはマスターしていなかった。結局25m毎に足を付き大きく深呼吸をしてまたスタートするということを繰り返していた。

 

そもそも水泳というのは、地上と同じような感覚で呼吸をしないと長い時間は泳げない。息継ぎが出来ない私は、その後もコースの途中で止まることが増えた。最終的には昨年の体験会の時よりも時間がかかってしまい、大会ボランティアの方々には更なる大迷惑を掛けてしまった。

私はとにかく恥ずかしくてたまらなかったが、「この悔しさをバイクとランにぶつけよう!」そう思った私はプールを後にして、バイク会場に向かった。

 

 

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