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トライアスロンへの道
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トライアスロンへの道 その25


スタート前のセッティングとイメージトレーニングを終えると
後はスタートの号砲を待つだけだ。

30分前にはスタート場所の海を前にセレモニーがあるのだが、
真夏とはいえ早朝6時30分の海は涼しくトイレに行きたくなる。

寒さか緊張かよく解らない震えが私の体にも迫り、
セレモニーの間にもトイレに行き最終準備に入った。



トライアスロンのスイムスタートは基本的に水泳が早い順に
前から後ろへと連なるので当然ながら私は列の一番後ろにいた。

すると一緒に練習した先輩達やトライアスロンの初心者大会に出場した
メンバーが「頑張ろう!」とか「マイペースで」などと気遣って声を掛けてくれた。

もちろん、スイムではビリになる覚悟はしていたが、
この期に及んで制限時間に間に合うかどうかの心配もあった。

海水浴場以外の場所を泳ぐのは初めてだったし、
クラゲは水面から見えるくらいだったのでこれから何が起きるのか、
はたして最後まで泳ぐことが出来るのか、心配でたまらなかった。



セレモニーのマイクは先ほどの盛り上げから一転してカウントダウンに変わった。

心臓がドキドキして飛び出しそうなのを隠すように、
私は目を閉じてカウントを耳を凝らして聞いていた。

「3、2、1、スタート!」

いよいよ私にとって始めての本格的なトライアスロン大会が始まった。
これから14時間後の制限時間を目指して私はゆっくり前に歩き出し、
冷たくクラゲが沢山待つ海の中へ歩を進めた。

海に向って歩き出すと一番後ろだと思っていた
私の後ろにもまだ沢山に人がいた。

水泳が得意じゃない人は私と同じようにとにかく邪魔にならないように
一番後ろからスタートすることがせめてものマナーだと言いたげだった。



海に入ると足が着く場所でもすぐに泳ぐ態勢になり
腕を動かしゆっくりと水に浮かび前に進んだ。

そして、少し進むと回りの選手達の手や足がバンバン当たってくる。

いや、当たるというよりは殴られたり、蹴られたりしている
と言った方が近いほど頭や手の動きをさえぎられいきなりゴーグルが外れた。

まだ足が着くところなのにゴーグルがずれただけで私はパニックになり
溺れたかのように手足をバタバタさせ焦ってゴーグルを直した。

しかしトライアスロンの用のウエットスーツはかなり厚く作られており
実際は何もしなくても海には浮くのだ。

だから、そんな無駄な力を使わなくてもゆっくりとゴーグルを直せるのに
パニック状態だった私はスタート直後から不安なまま泳ぐ事になった。



この日のコースは増毛の港を出て200mほど先の防波堤を越えてから
約1600mを泳ぐ2000mのコースなので周回などはない。

とにかくまっすぐ泳いでそのまま戻ってくるだけなのである程度泳げば
我々クラスの選手同士がぶつかるようなことはない。

後は目印のブイを目指してゆっくりゆっくりマイペースで泳ぐだけだが、
やはり大量のクラゲは気になってしょうがない。

沢山のクラゲを手でかき分けて泳ぐことになるので
はっきり言って注意のしようがないというのが現状だ。



そんな私もマイペースで泳いでいるうちに呼吸や手のかきも安定してきた。
やはりトライアスロン用のウエットスーツはかなり浮力があるので楽に泳げる。

これなら何とか制限時間に間に合いそうだな、と思った折り返し付近で
私の右側を平泳ぎでスイスイ抜いていく選手がいた。

「ちょっと、嘘でしょ!」と私は目を疑ったが平泳ぎの選手は
クロールで泳いでいる私を確実に抜いていった。

平泳ぎの選手が早すぎるのか、クロールの私が遅すぎるのか、
そんなことを考えるほど私自身泳ぎに余裕が出てきたのか。



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