トライアスロンへの道 その25

 

ここまで水泳2kmと自転車170km以上を走ってきたが、思いのほかスタミナ自体はまだ充分残っている。

しかし、左の膝の裏側が妙にチクチクする感触が気になり始めていた。まさか、バイクスタート後のペダル調整が良くなかったのか?そのチクチクした感触が痛みだと分っていても、怖くて考えたくなかった。

 

再び日本海に近い場所を走り、バイク最後のエイドでもある天塩町に戻ってきた。

バイクパートも180kmを通過して、あと20kmほどでバイクゴールになると考えるとホッとしてくる場面だ。残りをラストスパートするか、ランに備えて足を使わないようにするか。20kmという距離は長いようで短いものである。

もちろんランに備えて足の筋力を使わないようにするつもりだったが、そう思いながらもその時の私には急速な眠気が襲っていた。体が冷え切っていたのか、それとも見えない疲労が蓄積されていったのか。

 

更に悪いことに、さっきから気になっていた左ひざの裏側がジンジン痛んできた。シューズとペダルをはめる箇所のセッティングを固くしてしまったため、左足にかなりの力が加わったまま180km以上を走り膝裏の靭帯を痛めてしまったようだ。

この膝の痛みを抱えたまま、バイクゴール後に42kmを走ることがとても不安になってきた。私はとにかく左足の引き動作をしないように心がけて、残りの20kmは流すようなスピードで遠別町へ向かった。

 

バイクゴールの遠別町が近くなると、マイクアナウンスが聞こえてきた。どうやらゴールする選手ひとりひとりの名前をコールしているようだ。

制限時間まであと15分というタイミングでゴールしてきたので、マイクアナウンスにも力が入っているようだった。自分の名前がコールされるのは少し照れたが、それ以上にこれから42kmを走るという不安の方が心配だった。

 

バイクを降りてボランティアの方に預けると同時に、ラン用のバックを受け取り着替えルームに入ると同じチームのF先生がいた。バイクの横風にかなりやられたようで、途中のバス停で横になって休んでいたそうだ。確かにその気持ちはわかる。私も時間に余裕があればどこかで休んでいたかもしれない。

とりあえずバイクの制限時間には間に合ったので、着替えはゆっくり出来た。バイクジャージはランニング用のシャツに着替え、バイクパンツもまだ当時は慣れてなかったのでランニング用のパンツに替えた。

あとは帽子を被って、ランニング用のシューズのひもを締めればスタート出来る。エリート選手ならスイムからバイク・ランまで同じウェアで通すのだろうが、我々のようなギリギリ通過レベルの選手は着替えタイムが休憩タイムにもなる。

 

呼吸を整えながらしっかり着替えすることで、これから走る41.8kmに向けて気持ちを切り替えた。

 

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