トライアスロンへの道 その22

 

バイクで増毛港をスタートして間もなくペダルの遊びが気になり、しっかりと締め付けてしまった私はスッキリした気分でグイグイとペダルを回転させながら、まずは留萌の街を目指していた。

この日はスタート時は曇り空だったが、その後からポツポツと小雨が降る天気に変わりバイクで走るには少し不安があった。

 

それも留萌の街中で大きく直角に曲がるコースがあるのだが、実はここが結構厄介な場所であった。下りながら直角に曲がるので、毎年スリップして落車する選手がいるらしいのだ。しかもこの日は小雨が降り始めていたので、スリップする危険性はかなり高かった。

私はドキドキしながら、慎重に右側にカーブして何とか最初の難関を乗り切った。

 

スイムでゴールした時点で私の後ろは数人しかいないはずなのに、トランジットやホイール・ペダルの調整で時間を食ったため、その時点で私の後ろに選手を確認することは出来なかった。いや、そんな余裕もなかったのだろうが、いずれにしてもほぼ最後尾に近い位置にいることは間違いない。

スイムでは制限時間から15分ほど余裕があったものの、その後で色々あったのですでに次の関門時間を気にしながらバイクを走らせなくてはならない。バイクの関門は3ヶ所あったのだが、最初の関門は130キロ地点だし実際のところ関門時間など覚えてはいなかった。

推定「ビリ」の私はとにかく前へ前へドンドン進むしかなかった。

 

留萌を抜けて小平町に入る頃にはようやく呼吸も落ち着いてきて、バイクのペダルの回転もいい感じになりつつあった。そして前を走る選手を次々と抜き去ることに少し快感を感じ始めていた。

それからはスイムの途中で挨拶を交わした知り合いの女子選手を抜き去り、何度か練習を共にした同じチームの大先輩を抜いてスピードも乗ってきた。ちょうど平らな場所が続いていたので、私は「ここで貯金を作っておこう」という思いから、ペダルを引く力を意識してスピードを上げていった。

 

トライアスロンのバイク競技では基本的に最初から最後まで降りないで走るものなのだが、このレースは200キロの距離で制限時間も7時間40分なので、その間どうやって過ごすのだろうと思い何度か先輩に聞いてみたものの、明確な答えは得られなかった。

人それぞれということなのだろうが、そんな長い時間自転車に乗りっぱなしなんて考えられない。練習の時は先輩達と一緒だったので、交通量が少ない場所などで時々おしゃべりしていた。

 

しかし今は初のロングレースで、完走できるかどうかさえも解らないくらいだったので、とりあえず一生懸命走ることしか考えられなかった。とは言え、そんな長い時間だけにエイドステーションは唯一の楽しみ、というか貴重なオアシスになるのだろう。

ロングトライアスロンがショートトライアスロンと違うのは、やはりバイク乗車中のエイドであろう。バイクに乗りながら水分を摂り、食事をすることになる。これはよく考えると凄いことである。

そんな疑問符が並んでしまうようなことを考えながらも、私は最初のエイドステーションの近くまで来ていた。

 

 

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