前方の様子からゴール地でもある羽幌の町が近づいていることは分っているが、道路は真っ暗で前後の選手も見当たらない。自分はなんでこんなところを走っているんだろう。なんでこんな苦しい思いをしているんだろう。

そんな思いばかりが頭の中でぐるぐる回り、本当にやめたくなっていた。体が冷え切ってまともな思考能力が失われつつあったのだろう。不思議とゴールが近くなればなるほど、止めたいという思いは強くなっていた。

 

そんな時、大きな橋を渡るとぼんやりと明かりが見えた。

「あぁ、ゴールが近いんだぁ」と、その瞬間も私は他人事のように受け止めていた。沿道にいる人たちは「もう少しだ」「頑張れ」と言ってくれるが、ゴールまであとどのくらいなのか全く分らない。時計を見ると制限時間まで20分を切っている。

 

羽幌の街の中に入ってはいるが、よく考えるとゴールがどこなのか自分自身でも把握してなかった。何度も出場していればあの角を曲がればゴールが見えるとか考えられるが、初めて出場してコース状況も全く分っていないことを今さら悔やんだ。

ゴールまであと数百メートルなのか、それとも数キロなのか分らない状態で私は少しパニックになった。

 

近くに立っている人が応援の人なのか係りの人なのか分らないので、残りの距離を確認することも出来ない。少し前まで間に合わなくてもいいと思っていた私が、急にゴールしなくてはならないと感じ、急激にペースを上げた。

これまで2キロを泳ぎ、自転車で200キロを走りきり、更に40キロ以上もマラソンして来たのに、ここまで来て制限時間に間に合わないなんて許されない。とにかく残りの距離が分らないので、もしかしたら間に合わないかもしれないと思うと、急に泣き出しそうになった。

沿道の人たちが応援してくれているのにそんな事には目もくれず、とにかく泣きそうになりながら私は全力で走った。

 

ゴールまであと何キロなのか解らないまま、制限時間はあと12分ほどに迫っている。

 

国道232号線沿いには声援を送ってくれる人が沢山いて、地元の人が「頑張れ」「もう少し」と応援してくれる。それはもちろん嬉しいのだが、私の中ではゴールがどこにあるのか分からないので、とにかくコースと思われる場所を進むしかない。

 

ずっと何時間も国道を真っ直ぐ走ってきたそんな時、目の前では久しぶりにコースが折れ曲がろうとしている。

「もしかしてゴールが近いのか?」